いえつく5のはじまり

いえつく5は、「近所づきあいのデザイン」。テーマだけ聞くとやや大げさに聞こえてしまいますが、身の丈に合った地道な活動を基本として、建物が出来てからが、むしろスタートとも言える長期的なこころみを考えています。

ここで、いえつく内での話し合いの一つを紹介したいと思います。

:俺さ、普通に家をつくるのではなく、西荻という街を強く意識して、家を建てたいんだよ。普通に家建てるんじゃなくて、西荻で顔馴染みが増えて、地域に根差すような、そんな暮らしがイメージなんだよね。

:「通りに住まう」というテーマはどう?

:いいじゃないすか。

:西荻みたいに成熟した町だと、住宅ですべてを完結するのはとてももったいないよね。飲食店に限らず、多様なお店、サービスが点在している。各種行政サービスだってコンビニで出来る時代。地域、都市との関連性を意識して暮らさないとね。

:学生時代にあった「SXL ブーメランの家」と言うコンペのようだな。この町自体が住宅の拡張スペースに、もしくは住宅が町、地域へと拡張していくような、そんな住宅のあり方が面白そうだ。

:今回、せっかくネイルのお店が家の中にあるのだから、通常の住宅よりも、他者とのかかわりが出るよね。 それは一つの大きな力になる。「住宅」と「お店」と「通り」をセットで扱うことで、単に懐古的ではなく、現代にフィットした人との関わり、地域社会のあり方を再考することができそうでしょ。

:そうそう、あくまで現代にフィットした地域社会のあり方であって、変にリアルを捨ててもいけない。そもそもプライバシーやセキュリティと言った価値観を売りにした住宅は商品として売れている。これは、社会がそれを受け入れているということでもある。  nLDK、都会暮らしは、ある意味でいろんなしがらみから個人を解放しているわけだから。ただ、それでも最近はそれが行き過ぎちゃって、どんどんと閉鎖的な住宅のあり方が一般的になってきている。これはやばい状況っすね。

:そうっすね。建築が知らず知らずに人の行動を制約することはたくさんありますね。つくって、お終いで、使い方は知ーらないという感じで。つくった後、そこでどんなことが起きているかの再検証は難しいっすね。今回いえつくでは住み手とつくり手が同じという恵まれた関係だけに、角田さんにはある種の実験に立会ってもらわないといけないw。

: 実験とは大げさだなw。まあ、でも建築をつくることはある種そういう意味を常にはらむよね。

:そうね。そういった中で、僕らが今回、敢えて得たいものとは、やはり、繋がりみたいなものなんだろうね。主体と主体の間に生じる関係。都会暮らしを選ぶというのはもともと心地好い匿名性にあったものだろうけど、最近はどうも行き過ぎちゃている感じ。もう少し、そこに意識を向けたいよね。どんどん蛸壺化する世の中では世代間でリレーして行くべきものが伝わらない。実感として伝えるためにもやはり、リアルに人と繋がっていかないと難しい。「開く」というイメージは住宅という建築では嘘っぽい。むしろ「招き入れる」と言った言葉がピンとくる。招き入れるための場所があって、招き入れる動力があって、招き入れた時に偶然の接触がありうる場所を設けたい。

: とにかく、ここで家を建てること、そして、この「通りに住まうこと」について、きちんと近所の人と向き合って、徐々に巻き込んでいくようなプロセスを楽しんで活動しよう。

:そう。まずは普通に挨拶できる関係。 ごみ置き場のマナーが向上することなど、そういった地道なことから始めて、いえつくりを楽しみたいね。

:俺天才!! 例えば、通りに名前をつけてみる。ってのはどうだ?

ストリートブランディングまではいかないまでも。

:面白そうね。

:名前がつくことで道の両端に手作り看板が出て、通りに面したお店のHPに通り名が使われる。その結果、通りに愛着が生まれ出して、通りを介してのコミュニケーションがちょっとうまれる。挨拶の活性化、ゴミ出しなどのマナー向上、震災時に相手を気遣う、子守を頼める関係・・・。なるほどね。

:行く行くはこの通りの有志でイベント・市など・・・。そして、住宅という点で生じた繋がりが、通りという線として、発展して行くようなうな。

:OK.角田に西荻を拠点に楽しい活動をしている人を紹介するよ。これで、俺の仕事は完了だw。

:よろしく。

では、そういったテーマでいえつく5は、近所づきあいをデザインしましょう。

コメントをどうぞ